フィリピン・トラベルマイスター検定

Theme 8

フィリピンの食文化

フィリピン料理2

フィリピンの食文化

7,641もの島々を有し、その土地土地で多様な食文化を形成してきたフィリピン。近年こうした独自の食文化が次々発見され、国内のみならず国際的にも知られるようになりました。「旨味を大事にするところが、フィリピン料理と日本料理の共通点です」と教えてくれたのは、マニラの名店「トーヨー イータリー」のシェフであるジョーディー・ナバラ氏。本ページではナバラ氏監修の下、フィリピンの最新グルメシーンをはじめ、諸外国との交流から生まれた料理、また日本の人々におすすめしたい食文化について紹介します。

動画を見る
『フィリピンの食文化(後編)』

世界から注目を集めるフィリピンの最新グルメシーン

有名海外シェフとの交流

近年フィリピンでは首都マニラを中心に、クリエイティブな料理を提供するレストランが増えてきています。こうした流れのきっかけのひとつとなったのが、2015年にマニラで開催された美食の祭典「マドリッド フュージョン マニラ」です。

フィリピンとスペインの370年に渡る歴史を記念し、3年続けて行われたこのイベントには、偉大な料理人と名高い「ムガリッツ」オーナーシェフのアンドニ・ルイス・アドゥリス氏や、スペインを代表する料理人「アルザック」のエレナ・アルザック氏、台湾の「ロー」やシンガポールの「レストラン・アンドレ」に携わる台湾人シェフのアンドレ・チャン氏をはじめ、世界的に有名なシェフが参加。

またフィリピン国内からも「トーヨー イータリー」のジョーディー・ナバラ氏や「グレース・パーク」のマルガリータ・フォレス氏など、フィリピンの美食シーンを牽引するシェフが集結しました。

フィリピン人シェフと海外シェフの交流の場となった「マドリッド フュージョン マニラ」は、フィリピンの料理と独自の食材を世界中に広める役割を果たし、以降フィリピンの若い料理人たちは世界各国のシェフとの交流を日々深めています。海外シェフのなかにはもちろん日本人シェフの存在も。例えばナバラ氏は、最新の2021年版「アジアのベストレストラン50」で第7位に輝いた東京の名店「フロリレージュ」の川手寛康氏と交流を持ち、美食をシェアして楽しむ“ポップアップディナー”を定期的に実施しているほか、多数の日本人シェフと刺激を受け合っているといいます。

有国際的評価を得る背景

フィリピンのレストランおよびシェフの目覚ましい躍進は、その受賞歴からも分かります。2021年版「アジアのベストレストラン50」の第49位には、ナバラ氏の「トーヨー イータリー」がランクイン。

また惜しくも50位以内入賞は逃したものの、第84位にはタガイタイにある「アントニオス」、第90位にはチェレ・ゴンザレス氏が率いる「ギャラリー バイ チェレ」が選ばれるという快挙を達成しました。

このようにフィリピンの食文化が国際的に認められるようになった背景には、海外シェフとの交流だけでなく、ナバラ氏やゴンザレス氏といったマニラを中心に活躍するシェフたちの努力と飽くなき探究心があります。彼らは自然豊かなフィリピン全国を巡り、新しい食材や珍しい食材を入手。それらを元に、新たなフィリピン料理を作り出しているのです。

今では各地にコネクションができ、食材が送られてくることも増えたというナバラ氏は、次のように語っています。「フィリピン料理とその材料は、多様性に富んでいます。例えば代表料理である『アドボ』をとっても、地域によって違うものを指すことも。こうしたフィリピン国内での新たな発見を通じ、さまざまな出会いを得ています」。
こうしてフィリピン料理は今、爆発的な盛り上がりを見せているのです。

他国との関わりから生まれたフィリピン料理

さまざまな国と地理的および歴史的に関わってきたフィリピンには、そのなかで生まれた料理も少なくありません。
例えば近隣諸国には名前は異なるものの、非常に似通った料理が存在します。酸味の効いた伝統的なスープ「シニガン」は、マレーシアでは「シンガン」と呼ばれ親しまれる一品です。

また砂糖をかけたバナナのフリッター「マルヤ」は、インドネシアで「イサン・ゴリン」と呼ばれています。さらにチキンベースのリゾットである「アロス・カルド」は、ベトナムでは「チャオガー」といいます。これらは各国との交流を経て生まれた料理の一例です。

また、外国からの影響からできた料理も数多くあります。中国からは麺類全般に影響を受けており、「パンシット」「ラパズ・バッチョイ」といったフィリピン料理が誕生しました。日本からの影響としては「シニガン・サ・ミソ」など、味噌を使用することが挙げられます。

さらに、スペインの植民地だったフィリピンでは「カリオス」「ガンバス」「パエリア」といったスペイン料理が日常的な食事として楽しまれています。メキシコから入ってきた「タマーレス」は元々トウモロコシで作られる料理ですが、フィリピンでは米にアレンジされています。同様に「バルバッコア」は肉のスローローストですが、フィリピンでは牛のすね肉の煮込みとして広まりました。さらにアメリカからはケーキやサラダ、サンドウィッチ、カクテルなどの食文化が流入しています。

日本の方に紹介したいフィリピン料理5つ

ここで数あるフィリピン料理のなかでも、ナバラ氏がぜひ日本の人々におすすめしたいというフィリピン料理を5つご紹介します。

1、シシグ

シシグはルソン島中部にあるパンパンガ州の名物料理。細かく刻んだ豚の耳や頬肉を豪快に炒めて作ります。B級グルメとしても有名で、脂っこくしっかりとした味付けがビールのお供にぴったりです。

2、カレカレ

カレカレは牛肉と野菜をピーナッツソースで煮込んだフィリピンの人気料理。バゴーンというフィリピンの発酵調味料をお好みで混ぜて食べると、また違った味が楽しめます。

3、ロンガニーサ

ロンガニーサはフィリピンのソーセージの総称です。朝食としても人気があり、目玉焼き、ガーリックライスとよく一緒に食します。またイロコス地方のビガンでは、パイ生地の中に肉や野菜を入れて揚げた名物グルメ「エンパナーダ」に、ロンガニーサを入れたものが特に人気です。

4、ブンタア

ブンタアはミンダナオ島北東部に位置するブトゥアンの名物料理。蟹の身や蟹味噌、新鮮なココナッツをココナッツミルクで煮込みます。

5、ハロハロ

日本でもお馴染みのハロハロは、フィリピンを代表するデザート。かき氷の上にトロピカルフルーツや煮豆、芋、アイスクリーム、ゼリー、ココナッツ、ナタデココなどをトッピングします。

お米から作るフィリピンのお酒「タプイ」

バナウエ州やマウンテン州の伝統的なお酒として挙げられるのが、タプイです。タプイはライスワインの一種で、日本酒のようにお米から作られています。

ただしナバラ氏曰く「日本酒は透明なものから濁ったものまでさまざまな種類がありますが、タプイはどちらかというとシェリーワインに似ていて、味が濃縮されており、黄色に近い色をしています」。

また、外国からの影響からできた料理も数多くあります。中国からは麺類全般に影響を受けており、「パンシット」「ラパズ・バッチョイ」といったタプイは結婚式やお祭り、稲刈りの際など、地元の人々にとって重要なシーンで飲まれます。

また山岳地帯のイゴロットで行われる「イピティック・フェスティバル」では、最高のライスワインを作るため、マウンテン州各地からライスワインの醸造家が集結。丸一日かけて行われるイベントでは、木彫りコンテストや美術品の展示、料理対決なども開催されます。

監修は、フィリピングルメ界のトップに立つ「トーヨー イータリー」のシェフ・ジョーディー・ナバラ氏

ジョーディー・ナバラ氏について

本ページの監修に携わったナバラ氏は、イギリスの「ザ・ファット・ダック」や香港の「ボーイノベーション」など名だたるミシュラン星付きレストランで修行を積んだのち、2016年、マニラ中心部に「トーヨー イータリー」をオープンさせた人物です。海外での経験を経て、自分が愛し慣れ親しんだ故郷の料理であるフィリピン料理の重要性に気付かされたというナバラ氏。

自分たちが作る料理によってフィリピンの食材や料理、文化から国民性を再発見し、この国とさらに深い繋がりを感じたいと考えている人々のための場所を提供することを、お店の夢に掲げました。

フィリピン料理をベースに、イノベーティブ・フュージョンを提供する「トーヨーイータリー」の評判は瞬く間に広まり、「アジアのベストレストラン50」で2018年に注目株賞を受賞して以降、2019年から2021年に至るまで毎年ランクインを果たしています。

「トーヨー イータリー」について

店名にある「トーヨー」とは、フィリピンでよく使われる調味料のひとつ「醤油」を指します。ありふれた調味料を店名に冠すことで“当たり前”を再発見すること、そして醤油というシンプルな食材に時間や手間をかけることでより美味しいものができるといった考えから、「トーヨー イータリー」という店名が付けられました。 広々したオープンキッチンと木製テーブルが設置された店内は、グレーが基調の洗練された家具と古き良きマニラの装飾を配した空間。壁には地元アーティスト制作の食器や絵画、写真が飾られているところからも、フィリピンと密接に繋がるお店のポリシーがうかがえます。

そんな「トーヨー イータリー」で振る舞われるのは、フィリピン文化にインスパイアを受けながら現代的なアレンジを加えた料理の数々。例えば「バナナケチャップ」というメニューは、バナナとバナナビネガーを発酵させて作った地元で親しまれるケチャップを、エビとカニの身を交互に重ねたナスのオムレツと共に盛り付けたものです。
ナバラ氏はこう語ります。「自分が食べ慣れているフィリピン料理を表現することで、フィリピンの食文化を共有できていることを嬉しく思っています」。

動画

NEWS

検定情報

検定の最新情報をメルマガでお知らせします